1621人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ
その後、リエルはともに王宮入りする侍女としてエマを選んだ。
エマが新人なので父は渋ったが、リエルはそれを押し通した。
そして出発の日、たいした見送りもなくリエルはエマとともに王宮から迎えに来た馬車に乗った。
道中、リエルは静かに窓の外の景色を眺めていたが、エマはガチガチに緊張していた。
「あのう……本当に私でよかったのでしょうか?」
訊かれたリエルはエマに目を向けて、冷静に答えた。
「私があの家で唯一信用できるのはあなただけなのよ」
「そうなのですか?」
「ええ。だから、これから私のことを支えてくれる?」
リエルはやんわりと穏やかな笑顔で訊ねた。
エマはぱあっと明るい表情になり、嬉しそうに返事をした。
「もちろんです。全力でリエルさまのお世話をさせていただきます!」
「ありがとう。よろしくね」
リエルはにっこり笑った。
それ以外の者たちはあまりよい印象を抱いていない。
それどころか、リエルを疎ましく思っている者たちばかりだった。
エマは今までのリエルとあまり接点がないし、性格も素直で、何より父から監視の命令を受けていない。
とりあえず、回帰前の侍女を排除できたことはよかった。
最初のコメントを投稿しよう!