3、もう二度と騙されない

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 ふたたび訪れた王宮。  回帰前はきらびやかな宮殿を見ると気絶しそうなほど緊張した。何度か訪れたことはあったが、暮らすとなれば別物だ。  必死に王宮のことを覚えたあの頃がなつかしい。  けれども今は、死ぬ前の悲惨な思い出ばかりが強烈に残っている。  王宮の家臣と使用人たちに案内されながら回廊を歩いていた。  エマは初めてということもありそわそわしているが、リエルはいたって冷静だ。見慣れた宮殿内のどこに何があるのかほとんど記憶している。  ふと、前方から衛兵たちに囲まれたアランが厳かな様子で歩いてきた。  リエルはどきりとして身構える。  アランはリエルの前で足を止め、話しかけた。 「君が俺の妻となるリエルか?」  リエルは落ち着いた表情で挨拶(カーテシー)をおこなう。 「王太子殿下にご挨拶申し上げます。カーレン侯爵家のリエルでございます」  ゆっくりと顔を上げるとそこには見慣れた夫の姿。  穏やかで善人の顔をしている。 (その顔に騙されたわ)  憤怒に満ちた表情で罵倒し、何度もリエルの腹を蹴りつけたアラン。  最後にはリエルの胸を貫いて殺した。
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