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よく考えてみたらアランに大切にされたことなど一度もない。
政略結婚だからそれが当たり前で、夫のご機嫌を取ることが妻の役割だと信じて疑わなかった。
そのあげくがあの結末だ。
(二度と繰り返さないわ)
アランはリエルの態度に問題ないと思ったのか、比較的穏やかに話す。
「俺は忙しい。婚約期間とはいえ、君には王太子妃としての仕事をしっかりしてもらいたい」
(そうでしょうね。愛人とのお戯れでお忙しいですものね)
アランは誰にでもいい顔をする。
見た目だけはいいので女が寄ってくる。
だが中身は自分の思いどおりにならなければ気に入らない自己中な面がある。
その上執務をおろそかにし、侍従を困らせている。
リエルは淑女を演じ、丁寧に返事をする。
「殿下の仰せのままに」
アランは満足げに笑った。
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