40、最後の危難

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 ディアナ王国はすでにユリウスを中心にまわっていた。  国王の容態が少し安定していたが、多くの手はそちらへまわりユリウスはさまざまな雑務も担うことになった。  執務机には大量の書類が積み上がり、山ほど届く貴族からの嘆願書も目を通さなければならない。  ユリウスはうんざりした顔でそれらを見つめた。 (はぁ……やることが多すぎて死にそう)  それでも、アランの機嫌をうかがいながらおこなっていたときよりも幾分か楽だ。  ユリウスは渋々仕事に取りかかる。  ところが、すぐに侍従が執務室を訪れ、中断させられてしまった。  侍従はかなり慌てた様子で息を切らせている。 「大変です。アラン殿下が騎士を殺害して逃げ出したそうです」 「何だって? 兄上はどこへ?」 「わかりません。すぐに治安隊にも町を探させています」  ユリウスはしばらく考えて、もしやと思い至った。 「国境の検問を強化して!」 「承知しました」  侍従が出ていったあと、ユリウスは神妙な面持ちで考え込んだ。 (もしかしたら兄上は……)
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