40、最後の危難

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 そこは辺境にある貧民街だ。  町中のあちこちに飢えで倒れた人々の姿がある。  黒いフードをかぶった男たちが数人、とある古い建物の中に入っていった。  そこには同じようなフード姿の人間が集まっている。  ここは闇商人の取り引き現場だ。  違法な品の売買だけでなく、人買いもおこなっている。  頼まれれば暗殺も請け負っていた。  最近アストレア帝国の皇太子によって動きにくくなっている。  彼らは皇太子の暗殺を目論んでいた。  綿密な計画を練り、皇太子を殺害するチャンスをうかがっている。  そんなときに現れたのが、アランだった。  アランは大量の金貨の入った袋を彼らに見せつけて言った。 「俺をアストレア帝国へ連れて行け」  アランは皇太子とともにいるリエルに近づくために、この暗殺集団に紛れ込むつもりだった。 (リエル、お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃになった。お前が手に入らないなら……)  アランは憎悪で歪んだ表情で、口もとだけ笑みを浮かべる。 (お前を殺して俺も死ぬ)
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