40、最後の危難

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 皇宮入りを控えていたリエルはこの日、エマに髪型を整えてもらっていた。 「今日は結い上げてみました。いつもと雰囲気が違って見えますよ」 「あら、本当。大人びて見えるわね」  鏡で確認したリエルは満足して微笑む。 「本当に素敵ですー! 皇太子殿下はすごく喜んでくださるでしょうね」 「ええ、そうね」 (せっかく着飾ってもどうせ部屋に閉じ込められるのよ)  リエルは頬を赤らめながら、複雑な心境になった。  エマはにこにこしながら茶化すように言う。 「リエルさま、真っ赤になっちゃって可愛い」 「うるさいわよ。早く着替えをしましょう」 「はいっ!」  リエルに用意されたのはワインレッドのドレスだ。  大きな花飾りとレースが施され、銀の宝石が散りばめられている。  動くと照明の光の加減できらめて見える。    準備が整ったところで使用人が声をかけてきた。 「リエルさま、皇宮からお迎えが参りましたわ」 「すぐに行くわ」  リエルは名残惜しそうに数ヵ月暮らしたこの屋敷に別れを告げた。
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