40、最後の危難

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 屋敷の前には豪華な馬車が停まっていた。  リエルが御者に手を引かれて馬車に乗り込もうとしたとき、グレンと皇宮の騎士たちが駆けつけた。  馬から降りて走ってくるグレンを目にしたリエルは驚いた表情で固まった。 「驚いたわ。あなた、待ちきれなかったの?」  グレンのことだからサプライズのつもりなのだろうと思ったリエルは冗談めいた口調で言った。  しかし、グレンの深刻な表情に気づいて眉をひそめた。 「グレン?」 「無事でよかった」 「どういうこと?」  グレンはリエルの肩を抱いてすぐさま屋敷へ向かって歩いた。 「説明はあとだ。すぐに戻ろう」  どういうことかわからないが、リエルは黙って言う通りにする。  すると、突然ルッツの声が高らかに響いた。 「殿下、敵襲です!」  それと同時に黒いフード姿の者たちに周囲を取り囲まれた。  襲いかかってきた者たちは次々と騎士たちに叩き伏せられたが、その中からリエルの目に衝撃の人物が映った。  ぼろ衣を着て変わり果てたアランの姿だ。  アランは剣を手に持ち、リエルに向かって声を上げながら突進してくる。 「リエル、お前は俺から逃げられないんだ!」
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