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宮殿の離れにある別邸のゲストルームには、ノエラのために豪華な部屋が与えられている。
表向きは友人であるリエルを支えるためにアランが特別に許可して与えたとされている。
だが実際には、アランとノエラの密会場所だった。
ふたりはソファにとなり合って座り、ぴったりとくっついている。
「ノエラ、君の言うとおりだった。リエルは従順なふりをした問題児だ」
それを聞いたノエラはにんまりと笑った。
(うふふ、こんなに上手くいくとは思わなかったわ)
ノエラはにやける表情を抑え、あくまで友人を心配する態度でアランに接する。
「だから言ったではありませんか。あの子にはほとほと手を焼いてきましたの。だけど、リエルは昔からの親友ですもの。放っておけませんわ」
「君は心の優しい子だな」
「とんでもないですわ。あたくしはただリエルの友人として、彼女に王太子妃にふさわしい人間になってほしいだけですから」
アランはノエラの背中に手をまわし、彼女をそっと抱きしめる。
その腕の中で、ノエラはうるんだ瞳をアランに向けた。
学院時代は優秀ゆえに周囲から注目を浴びるリエルのとなりで、ノエラはお飾りのようだった。それがノエラには許せなかった。
どうにかしてリエルよりも優位に立ちたかったノエラは次第に嫉妬から怨みに変わっていった。
(ああ、リエル。あなたの苦痛に歪む顔が早く見たいわ)
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