5、王太子の偽善

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 そこはリエルに与えられた書庫だった。  背後には壁に沿って本棚が並び、執務机には大量の書類の山だ。  リエルはそれらすべてに目を通し、淡々と作業をこなしていた。  しばらくするとエマがお茶を淹れて持ってきた。 「こんなに大量の仕事を押しつけられるなんて」 「平気よ。今日の分はすでに終わっているから」 「ええっ? この量を半日でですか!?」  エマは積み上がった書類の山を見て驚愕した。 (初めてのときはわからないことが多くて時間がかかったけれど、2回目ともなれば楽だわ)  リエル背伸びをすると、紅茶をひと口飲んだ。 「エマ、休憩がてら庭園を散歩したいわ」 「はい。では一度お部屋に戻って着替えられますか?」 「いいわ。このまま行きましょう。獲物(さかな)は泳がせておかなくちゃ」 「……はい?」  リエルはふっと笑みを浮かべた。
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