5、王太子の偽善

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 少々急ぎ足で部屋へ戻っていたところ、突然背後から呼び止められてしまった。 「これは、義姉上(あねうえ)ではありませんか」  その声にどきりとして、リエルは立ち止まった。  振り向くとそこにいたのは、アランの弟であるユリウスだ。  リエルに苦い記憶がよみがえる。  それは血まみれで倒れるユリウスの姿だ。  回帰前、処刑される直前のことだった。ともにお茶を飲んでいたユリウスがいきなり吐血して倒れたのだ。  ユリウスは瞬く間に顔面蒼白になり、アランとノエラが駆けつけてきたときには絶命していた。  何が起こったのかリエルにはわからなかった。  ただ、彼と同じ紅茶を飲んだリエルには何の症状もなかった。  状況的にリエルが犯人とされてしまったのだ。  笑顔のユリウスを見ていると、リエルは急激に回帰前の記憶がよみがえって眩暈がした。
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