5、王太子の偽善

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「……ねうえ、義姉上(あねうえ)」  過去の記憶に囚われ、ぼんやりしていたリエルは、ユリウスの声で我に返った。 「え? ああ……これは、ユリウス王子殿下」 「どうぞユリウスとお呼びください」  ユリウスはにっこりと微笑んだ。  リエルは複雑な表情で笑みを浮かべる。 (ユリウス、当たり前だけど生きているわ)  悲惨な記憶がよみがえり、いまだ鼓動が落ち着かないが、とりあえず安堵する。 「お散歩中ですか? よろしければご一緒しませんか?」 「あ、えっと……」  すぐにでも戻らなければならない。  リエルがどう説明すべきか迷っていると、代わりにエマが答えてくれた。 「申しわけございません。リエルさまは体調が優れないようでして……」 「え? それは大変だ。部屋までお送りしますよ」  突然の申し出にリエルはすぐさま断る。 「ユリウス殿下のお手を煩わせるわけには……」 「こちらには護衛騎士がおりますから、ご安心ください」  にっこりと笑ってそう言ってくれるユリウスに、リエルは複雑な心境を抱いた。
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