5、王太子の偽善

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 ユリウスの背後にはふたりの護衛騎士がいる。  リエルは少し考えてからユリウスに返事をした。 「では、お願いしてもよろしいですか?」 「はい。ゆっくり歩きましょう」  ユリウスはリエルの体調を気遣って歩幅を合わせてくれる。  そんな彼に嘘をついて心苦しいが、これはいい機会だ。 (ユリウスには申しわけないけれど、利用させていただくわ)  今、部屋へ戻ると盗みを働いた使用人がいるはずだ。  そこにユリウスとともに鉢合わせすれば、使用人はどんな言い逃れもできない。  リエルがユリウスと宮殿内を歩いていると、まさかの事態が起こった。  前方からアランが侍従と護衛騎士を連れて歩いてくるのだ。  リエルは驚き、唇を噛んだ。 (こんなときにアランと鉢合わせてしまうなんて)  お互いに足を止め、向かい合う形になる。  アランはリエルとユリウスが一緒にいるのを見て、眉をひそめた。 「なぜ、俺の婚約者とユリウスが一緒にいる?」
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