5、王太子の偽善

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 面倒なことになってしまった。  どう答えるべきか思いあぐねていると、代わりにユリウスが答えてくれた。 「義姉上(あねうえ)の体調が優れないようなので、お部屋までお送りしているところです」  笑顔で正直に答えるユリウスに対し、アランは不機嫌な表情になる。  アランはリエルに顔を向けた。本当に体調不良なのか確認しているようだ。  リエルはただ真顔でアランを見つめる。  すると、アランはとんでもないことを言い出した。 「わかった。では俺が部屋まで送ろう」  リエルは驚き、目を見開いた。  そしてユリウスは少しの間のあと、渋々了承した。 「そうですね。兄上がそばにおられるのが一番いいですね」  ユリウスは拍子抜けしたように苦笑する。  もう少しリエルと話したかったのだろうが、夫となる兄を差し置いて自分が部屋まで送るわけにはいかない。 「行くぞ」  アランはリエルにそう言ってくるりと来た道を戻る。  リエルは少し距離を置いてアランの背後について行った。  ユリウスはふたりにぺこりとお辞儀をして立ち去った。
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