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アランとは会話が弾むことはない。
ふたりともだんまりで、険しい表情をしている。
そんな中、エマがこそっとリエルに耳打ちした。
「アラン殿下はやはりお優しいお方なのでしょうか?」
リエルはそれには答えず、黙ってアランの背後を歩く。
もしかしたら照れ隠しとでもエマは思っているのかもしれない。
リエルにとっては一緒にいるだけで億劫なのだが。
(予想外のことだけど、ちょうどいいわ。アランの目で真実を見ればいいのよ)
回帰前、使用人はリエルに盗みを見つかったときに、病気の家族がいるから仕方なくという理由を話した。
それを聞いたリエルは彼女を許してしまった。
二度としないと約束した使用人は何度も繰り返し、しまいにはリエルが街へ行って商人に宝石を売り渡したなどとデマを言いふらした。
しかも、それを信じたアランがリエルを引っ叩いたのだった。
リエルはうんざりした顔でアランのうしろ姿を見つめる。
(今回はこの件でアランに叩かれることはないわね)
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