5、王太子の偽善

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 リエルが部屋に戻ると、案の定盗みを働いた使用人がいた。  彼女は早すぎるリエルの帰りに驚くと同時に、一緒にアランがいたことに驚愕し激しく狼狽えた。 「お、お早いお戻りで、ございますね……」  使用人のポケットが膨らんでいるのを見たリエルは冷たく言い放つ。 「あなた、そのポケットにあるものを出しなさい」 「え? ええっとこれは……私の、おやつでございます」 「出して見せなさい」  リエルが強く言うも、使用人はまだ逃れようとする。 「そんな……庶民の食べ物をお見せするなんて、お恥ずかしく……」 「出しなさい!」  声を荒らげるリエルにエマと周囲の者たちは驚いた。  アランは眉をひそめて怪訝な表情でリエルを見つめている。  使用人は観念してポケットから宝石類を取り出した。 「そ、それはリエルさまの……!」  エマが声を上げると使用人は膝をついて頭を下げた。 「申しわけございません! 病気の家族がいるのです。給金では治療費が足りなくて、それで……」  使用人は涙ながらに訴えるも、リエルは冷めた目で見つめる。 (この嘘に前回の私は騙されたわ。この者に家族はいない。代わりに町の盗賊団と関わっているのよ)
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