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「許すわけにはいかないわ。あなたは王宮で盗みを働いたのよ。あなたを解雇するしかないわね。そうでしょう? 殿下」
リエルはちらりとアランに目をやったが、彼は眉をひそめながらも複雑な表情をしている。
そして、使用人に愛想笑いを向けながら遠慮がちに言う。
「う、うむ……だが、そのような事情なら致し方ない。未遂で終わったんだ。もう一度チャンスを与えてはどうだろうか?」
リエルははぁっとため息をついた。
(そう言うと思ったわ。いい人を演じたいのね)
使用人はアランを見上げて涙ぐむ。
自分が哀れで不幸な生い立ちなのを訴えてアランの同情を引くことに成功したのだ。
周囲の使用人たちも笑みを浮かべる。
「アラン殿下、なんて慈悲深いお方なの」
「やはり殿下は素晴らしいお方だわ」
「それに比べて……」
使用人たちはリエルに軽蔑の視線を向ける。
この場ではまるでリエルひとりが悪者となっている。
前回は犯人を許して責め立てられ、今回は真逆の行動をして非難される。
結局みんな、リエルが気に食わないのだろう。
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