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「何とでもおっしゃってくださって結構です。私はその者を許す気はございません」
「これは王太子である俺の判断だ。君の指図など受けない」
「今回許してまた同じことが起こった場合はどうなさるおつもりですか?」
アランはやれやれとでも言うように肩をすくめる。
「その者は今、俺と約束しただろう? 二度と盗みはしないとな」
「甘いですね」
「何?」
さすがにアランは痺れを切らしたのか、急に感情的になり、声を荒らげた。
「リエル、君はなんて薄情な人間なんだ。君は人の気持ちがわからないのか? この者は苦労してきたのだぞ。俺はこの国の民には皆に幸せになってもらいたい。そのために俺ができることは何でもするつもりだ」
アランはまるで正義を振りかざすように言い放った。
使用人たちからの尊敬の眼差しを受けて、彼ははますます盛り上がる。
「この俺の命ある限りな!」
アランが高らかと宣言したあと、周囲から歓声が上がった。
「殿下はなんて素晴らしいお方なのでしょう」
「このお方に仕えられて私たちは幸せだわ」
「殿下が王になられたらこの国は安泰ね」
リエルは吐き気がするほど気分が悪くなった。
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