5、王太子の偽善

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 そして後日。  それほど日が経たないうちに事件は起こった。  城内は少々ざわついていた。  使用人たちは掃除の手を止めて廊下で立ち話をしている。  リエルはその様子を柱の影でこっそり聞いていた。 「信じられないわ。あの子また盗みを働いたらしいわよ」 「今度は侍女の部屋から髪飾りや指輪を盗んだって話よ」 「殿下が寛大な心でお許しくださったのに裏切ったわけね」  その一方で、臣下たちは犯人ではなくアランに対して不信感を募らせていた。 「殿下は少々甘いところがあるのではないか」 「国王陛下が病に伏せっている今、殿下だけが頼りだというのに大丈夫なのだろうか」  アランの判断が間違っていた。  城内では彼の悪口をひそひそささやく者たちもいた。  リエルは黙ってその場を離れ、部屋へ戻る。しかし、途中でアランと遭遇してしまった。  アランはばつの悪そうな顔をしている。これだけ城内で非難の声が上がっているのだから当然のこと。体裁が何より大事な彼は抗議の矛先をリエルに向けた。 「あの日、君はわざと俺を部屋へ連れていったのではないか?」
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