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そして後日。
それほど日が経たないうちに事件は起こった。
城内は少々ざわついていた。
使用人たちは掃除の手を止めて廊下で立ち話をしている。
リエルはその様子を柱の影でこっそり聞いていた。
「信じられないわ。あの子また盗みを働いたらしいわよ」
「今度は侍女の部屋から髪飾りや指輪を盗んだって話よ」
「殿下が寛大な心でお許しくださったのに裏切ったわけね」
その一方で、臣下たちは犯人ではなくアランに対して不信感を募らせていた。
「殿下は少々甘いところがあるのではないか」
「国王陛下が病に伏せっている今、殿下だけが頼りだというのに大丈夫なのだろうか」
アランの判断が間違っていた。
城内では彼の悪口をひそひそささやく者たちもいた。
リエルは黙ってその場を離れ、部屋へ戻る。しかし、途中でアランと遭遇してしまった。
アランはばつの悪そうな顔をしている。これだけ城内で非難の声が上がっているのだから当然のこと。体裁が何より大事な彼は抗議の矛先をリエルに向けた。
「あの日、君はわざと俺を部屋へ連れていったのではないか?」
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