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言い返す言葉が見つからないのか、アランは突如話題を変えた。
「近々アストレア帝国の皇太子を招くことになっている」
「そうですか」
リエルはあっさりと返事をした。
アランは少し不機嫌な様子を見せながらも、平静を保ちながら続ける。
「我が国の今後に関わる大事な接待だ。君にとってはこの城で初めての仕事になる。失敗は許されないぞ」
「肝に銘じておきますわ」
お互いに険悪な雰囲気のまま立ち去った。
そんな中、アランは途中で侍女長とすれ違った。
侍女長は青ざめた表情で慌ててアランに頭を下げた。
アランの鬱憤の矛先は侍女長へ向けられた。
「侍女長、下の者たちの教育を徹底しろ。俺に恥をかかせるな」
「大変申しわけございません。厳しく指導してまいります」
険しい表情で去っていくアランを、深く頭を下げたまま見送る侍女長。彼女はしばらく俯いたまま、歯を食いしばっていた。
「あの女が来てから王宮の規律が乱れている。覚えてなさいよ、カーレン令嬢」
侍女長はきつく拳を握りしめ、その手は怒りに震えていた。
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