6、仕組まれた罠

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 リエルは庭園のテラスでお茶を飲みながら、アランの侍従から渡されたアストレア帝国についての調査書を読んでいた。  回帰前は例の事件のせいでアランはアストレア帝国と一時的に断交した。そのため、皇太子に会うことはなかった。 (今回は死者も出なかったし、事件もあちら側の使者が解決したみたいだから問題が大きくならなかったんだわ)  エマが紅茶を注ぎながらこの話について訊ねた。 「リエルさま、帝国の皇太子さまとお会いになるのですか?」 「ええ、そうね」 「どんなお方なのでしょうね。実は使用人たちのあいだではあまりいい噂を聞かないんですよ」 「へえ、どんな噂が出回っているの?」  エマはリエルに近づいて、耳もとでこそこそ話す。 「なんでも多くの愛人を抱えているみたいですよ。仕事もしないで毎日違う愛人と会っているとか」 (それってアランのことかしらね)  リエルは呆れ顔で紅茶を飲んだ。
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