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「しかも、飽きたらすぐに捨てるんですって」
「まあ、お遊びだものね」
「それだけじゃないんです。行方不明になった愛人もいるらしく、皇太子が暴力を振るったり殺したりしたんじゃないかって」
エマは青い顔で「ひいっ」と軽く悲鳴を上げるそぶりを見せる。
リエルはカップを置いて書類に目を落とした。
「まあ、あまりいい噂を聞かないのは知っているわ。自国のパーティにも顔を出さない人だもの。きっと好き勝手に遊び歩いているのよ」
なにげなくそう言ったリエルの言葉にエマがきょとんと首を傾げた。
「そうなんですか?」
リエルはうっかり回帰前の出来事を口走ったことにハッとする。
しかしエマは特に気にしていないようでほっと安堵した。
今から10カ月後の帝国主催のパーティにアランとともに出席したが、皇太子は現れなかった。
そのことを思い出し、リエルは表情を歪めた。
(そう、あのおぞましい事件のあったパーティよ)
パーティ会場で酒を飲んだあと気分が悪くなった。
それほど多く飲んだわけでもないのに、ひどく酔ってしまったのだ。
人気のない場所で壁に身体を預けて休んでいたところ、見知らぬ男に話しかけられた。
そして、気づいたらベッドの上にいたのだ。
数人の男たちも一緒に。
それをアランに見られたのだ。
まるで計画されていたかのように。
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