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「あら、リエルじゃない!」
その声に反応し、顔を上げると、ノエラがまぶしい笑顔を振りまきながら近づいてきた。
ここは王太子と妃が暮らす宮殿。ノエラは離れの宮殿にいるはずなのに、なぜここにいるのかと問い詰めたいが、おそらくアランが許したのだろう。
「お茶をするならあたしも呼んでくれればいいのに」
まったく遠慮する様子のないノエラに、リエルは呆れ顔で訊ねる。
「ノエラ、あなた、ずっと王宮にいるの?」
「うふふ。殿下が特別に滞在してもいいって言ってくださったの。これもリエルのためよ。あなたがひとりぼっちだと寂しいと思って」
満面の笑みを向けるノエラに対し、リエルは涼しい顔で彼女を見つめる。
「殿下は本当に噂通りの素晴らしいお方だわ。誠実だしお優しいし、あなたは幸せ者ね」
「そうね」
リエルはふっと苦笑する。
(回帰前は本気でそう思っていたわ)
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