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「そういえば、使用人が盗みを働いて解雇されたそうね」
ノエラは目を丸くしてわざとらしく驚いた表情で言った。
リエルは落ち着いて紅茶を飲む。
「噂ではあなたが使用人を唆してアラン殿下の気を引こうとしたっていう話よ」
リエルは紅茶を飲む手を止め、静かにカップを置く。
「噂って怖いわよねえ。リエルがそんなことをするなんてあり得ないから、あたしがみんなに言い返してやったわよ。リエルに限ってそんなことないわよってね」
満面の笑みでそんなことを言うノエラに、リエルは真顔から笑顔になった。
「当たり前じゃない。私がそんなことをするわけがないわ」
「ええ。あたしがリエルの濡れ衣は晴らしておいたわ」
「ありがとう、ノエラ」
(その噂、あなたが広めたのね。わざとらしいわ)
ふたりはお互いに笑顔で見つめ合う。
「ありがとう、ノエラ。あなたはいつも私の味方でいてくれるのね」
「もちろんよ、リエル。だって親友ですもの」
ノエラの口角が不自然に上がる。
リエルはそれに気づいたが、黙って微笑むだけだった。
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