6、仕組まれた罠

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 今日はアストレア帝国の皇太子が城を訪れる日で、アランとともに出迎える予定だ。  それなのに、この日に着るはずだったドレスが破れていたのだ。  エマが一昨日ドレスを確認したときはこんなことになっていなかったようだ。  不自然にはさみを入れられた痕跡を見たリエルは使用人の誰かのしわざだと気づいたが、今は犯人捜しをしている場合ではなかった。  代わりのドレスを用意し、急いで支度をしたものの、身につけるはずだった宝石もない。  最近盗みを働いた使用人が解雇されたばかりの状況で同じことをする者がいるとは考えにくい。 「申しわけございません、リエルさま。このような大事な日に」 「あなたのせいじゃないわ」  リエルは急いで代わりのドレスを着て、エマとともに部屋を出る。 (誰かが邪魔しようとしたのね)  だいたい想像はできるが今はそれどころではなく。  リエルは急いで皇太子を出迎えているだろうアランのところへ向かった。  しかし――。
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