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バシャッとドレスに水がかかった。
突然のことで何が起こったのか一瞬わからなかったものの、目の前でからんとバケツが転がり、ドレスがじわじわ汚れていくのを見た。
「まあ、汚らしい。でもお似合いじゃない?」
「ほんとね。大嘘つきのニセ妃にはお似合いだわ」
床が水浸しの状態で、近くに使用人たちが数人立ってクスクス笑っている。
「な、なんということを……!」
エマが怒りの形相で抗議しようとしたが、リエルはすぐさま制止した。
(この格好で表に出るわけにはいかないわ。もう急ぐこともないわね)
諦めにも似た感情。しかし、このまま黙って去るつもりは毛頭ない。
リエルは冷静に呼吸を整えて、静かにゆっくりと使用人たちへ近づいていった。
笑っていた使用人たちは急に顔を強張らせる。
「こ、こっちに来るわ……!」
「な、何よ……私たちは本当のことを言っただけよ」
リエルはニセ妃と言った使用人に向かって手を振り上げ、勢いよく引っ叩いた。
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