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何度も腹を蹴られているうちにリエルは血を吐いた。
くらりと意識を失いそうになったリエルに、アランは剣を突きつけた。
「王太子妃は病死したと民に伝える。処刑台へ送らないだけでもありがたいと思え。こうして誰にも知られることなく死ねるのだからな」
あまりにも冷たい口調だった。
リエルは力を振り絞ってアランに訴える。
「うっ、ごほっ……お願い、です……信じて、ください……殿下」
「黙れ。自分で仕出かしたことだ。潔く死を受け入れるがいい」
「……殿下!」
リエルが身体を起こすと同時に、胸に衝撃があった。
アランの剣がリエルの胸を貫いたのだった。
ごぼっと血を吐くリエル。
一瞬自分の身に何が起こったのか理解できなかった。
床にべしゃりと倒れたリエルのまわりは瞬く間に血だまりになった。
おぞましい光景の中、意識が薄れていくリエルのそばで、ノエラが泣き叫んだ。
「ああ、リエル! どうしてこんなことになってしまったの?」
「ごほっ……ノ、エラ……」
「あなたのことを信じていたのに! こんな結末ってないわ!」
ノエラが悲しんでくれている。痛みを感じてくれて泣いてくれる。
リエルはそんなふうに思ったが。
ぼやけた視界にあったのは、にんまりと笑うノエラの顔だった。
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