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貴族学院時代にともに学んだノエラ。
いつも一緒にいた彼女はふんわりと優しい笑顔にあふれていた。
気さくで男子たちに大変人気で、勉強だけが取り柄で人と接するのが苦手なリエルはうらやましく思ったものだ。
そして、尊敬もしていた。
ノエラはリエルの悩みをよく聞いてくれた。
リエルが王宮へ嫁いだあとは、伯爵の父とともに王宮へよく会いに来てくれた。
最近は窮屈な王宮暮らしに悩むリエルのために、ずっと王宮に留まってくれていたほどだ。
今まで見ていたノエラは誰もが清楚で可憐だと思うほど美しかった。
可愛らしい天使のような顔の彼女。
それが、今は悪魔のような顔をしている。
(まさか……まさか……まさか!)
優しいノエラの記憶がいくつかよみがえる。
(あの優しさはすべて演技だったの!?)
リエルはショックを受けると同時に視界が途切れた。
薄れゆく意識の中でアランとノエラの声だけが聞こえてくる。
「こんなことになって殿下が気の毒ですわ」
ノエラの甘ったるい声がやけに耳を刺激する。
「これからはあたくしが支えになりますから」
それに対するアランの答えも、リエルにとっては衝撃だった。
「やはり君は心の美しい人だ」
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