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唐突に自分の名前を呼ばれたセクトが肩を揺らす。
そうだった。話し合いの最中だった。
シャキッと背筋を伸ばし座り直す。
あの夜、セクトには一方的に意見を述べ、その答えを聞く前に帰ってきてしまった。
その話の続きをしなければならない。
「セクトの廃嫡は望んでいない。俺も、ユキノも」
「はい。これからも王族であることが罰だと……」
「そうだ。これはあくまでもセクト個人に対しての罰というだけだね。まぁそれ以前の問題があるんだけど……。なんだか分かるか?」
首を横に振るセクト。
彼はにこにこと食えない笑みで言葉を紡ぐ。
「セクト、俺はね? ユキノに害をなそうとした事が許せない。でも、俺は王子だ。だからユキノの安否が確認できた今、言うべきことはただ一つ。誤情報を流して戦争を起こそうとしたのは見過ごせない」
「……はい」
「もし俺が気が付かず国境近くまで軍を進行していたら? 間違いなく隣国は侵略という大義名分を掲げて攻めてきただろうね」
「っ、はい」
「そうなれば、苦しむのは俺たちじゃない。国民だ。わかるよな?」
「はい」
グレンの言葉にセクトはしおらしくうなだれた。
彼の言う通り、一歩間違えれば外交問題どころではなく、国際問題に発展しかねない事をセクトはしでかしたのだ。
今になってやっと自分のした事の重大さを理解したのか、セクトはガタガタと震えだす。
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