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プロローグ
あぁ、今日はなんて素晴らしき日なんだろう。
きらびやかな調度品が、シャンデリアの光を浴びて輝く様子を眺めながら、頬に手をあて感嘆のため息をついた。
「ユキノ・フォン・グレード! 今日この場を以って、お前との婚約破棄を宣言する!」
壇上の、シミ一つない赤い絨毯の上でふんぞり返る彼は、私の婚約者だ。
金髪碧眼のイケメン。
王族の象徴であるそれを受け継いだ、正真正銘この国の王子である。
最高権力者の息子に、学園の卒業パーティーという公衆の面前で婚約破棄を言い渡された私は、何を言えばいいのだろうか。
適切な言葉が思い付かず黙り込んでいれば、自分の都合よく解釈した彼がにやりと笑う。
「婚約破棄がショックだったみたいだな? だが男に二言は無い」
「えぇ、承知しております。殿下」
「僕はカーミラと結婚する」
ざわりと空気が揺れた。
「カーミラ様ですか。それはそれは……お幸せになって下さいませ。私、心から応援しております。それでは御前を失礼させて頂きます」
「ふん! 潔いことだな」
その言葉を質問に対する肯定と受け取り、私はゆったりと優雅に淑女の礼をし会場を後にした。
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