34.それぞれの思い

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 頭を抱えてどうしたものかと下を向いて悩んでいれば、二つの影が下りた。 「彼女はセクトに弱みを握られてたみたいだよ」 「グレン! ……と、セクト殿下」 「僕はついでかよ」  突如目の前に現れたグレンはセクトとヒルダを対面のソファに座らせ、私の隣に腰掛けた。 「で、僕をここに連れてきて何がしたいんだよ、兄様は」 「これからの事をちゃんと話し合おうと思ってね。あの場でハイ終わりってわけにもいかないだろ?」 「それは、そうだけど……」  私と目が合ったセクトは気まずそうに視線を逸らす。 「謝って許されるような事じゃないのは分かってんだよ。だから、僕の弁明なんていらないだろうが」 「セクト殿下って、一人称僕なのに口調はすごく荒いの、グレンと口調被らないようにしてるの? 反抗期? かーわいーね?」  そうからかってやれば、顔を真っ赤にして口をパクパクと動かしていた。 「なっ、な!」 「ユキノいじめない」 「はーい。で、ありきたりだけど、なんであんな事をしようと思ったの?」 「……兄様が、憎かった。なんでも出来る天才だって持ち上げられて、なのに努力は欠かさない。そんな奴に勝てるわけないじゃないか! 僕は第二王子だから、どうあがいても王にはなれない。なら、引きずり降ろすしかない……!」  短絡的な考えだが、セクトはまだ齢十五。中学生と考えるとそのような考えに至るのも頷ける。
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