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35.落とし前
王族としての務めをこなすセクトに、思わず笑みが浮かぶ。
「ちゃんと公務をこなしていれば、その努力を見てくれる人は現れるんじゃないの?」
「それじゃ遅いんだ!」
「グレンが王位を承るのは、もっと先の話よ?」
「それでもっ! 僕はっ……!!」
「はいはい、二人とも落ち着こうね」
言い争いに発展する前にグレンが仲裁に入った。
「先にヒルダについて話そうか。セクトについてはその後。わかった?」
腰に手を回され引き寄せられる。
頷くしか選択肢がないのを分かってやっているのだから、食えない男だと思う。
「それで、ヒルダ。貴女は実家のしている事を知っていたの?」
セクトの隣で黙り込んで座っているヒルダに問いかける。
「……いいえ。信じてもらえないかも知れませんが、私はなにも知りませんでした。セクト殿下から動かぬ証拠を見せられても、なにかの間違いだと……信じて疑わぬほどに……申し訳ありません」
「僕が動けば彼女はもうお義姉さんの侍女ではいられなくなる」
「どうしてもユキノ様の側にいたくて、協力しておりました」
「……そう。それでセクト殿下の手駒となったってわけね」
主人として喜んでいいのか、悲しんだらいいのか。
ただ一つ言うとすれば、これだろう。
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