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「一言、相談して欲しかった。私はそんなに頼りない主人だった?」
「っ! いえっ、いいえ! 決してそんなことはっ!」
「でも事実、貴女は相談しなかった。もし貴女の家が取り潰しになったとしても、口利きぐらいは出来たのに……」
私の言葉を聞いたヒルダはついにわっと泣き出してしまった。
溢れる涙を拭うこともせず、彼女は壊れた機械のように謝罪の言葉を口にするばかり。
「申し訳……ありませんっ! ユキノ様っ……申し訳っ!」
「いいの、貴女の変化に気が付けなかった私にも落ち度はあるわ」
「そんなっ、全てっ! 全て私が悪いのですっ! ユキノ様に大事にされている自覚がありながら、私は、私はっ……!!」
今まで一度も見たことがないほど取り乱すヒルダの姿に、私は目を見張った。
いや、そもそも侍女が取り乱すことなどあってはならない事だ。それが王宮で使える侍女であれば尚の事。
「ヒルダ。私は貴女を許したい。でも、あんな事があった以上、貴女の信頼は0に等しいわ」
「もちろんでございます! この後に及んで、浅ましくもまだ私を信じて欲しいなどと、そんな卑しい考えはありませんっ! ユキノ様の信頼を取り戻すためなら、下積みからやり直す覚悟だってあります!」
彼女の必死な言葉に頬が緩む。
「それでこそ私の侍女よ」
今まで通り彼女を雇う事は出来ない。一度崩れた信頼関係はすぐに修復できるものではないからだ。
しかし、優秀な腕の侍女を失うのも惜しい。
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