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「まず実家をどうにかしてきなさい。内部告発するもよし、セクト殿下に頼んでこの国から圧力をかけるもよし。貴女の好きにしていいわ」
「ユキノ様……」
「それで実家が無くなったとしても、貴女の腕なら王宮の見習い侍女としての試験も簡単に受かるでしょう」
ヒルダがゴクリと息を飲んだ。
私がこれから口にする言葉が分かるのだろう。
言いたくはないが、言わなければならない。
ヒルダの主人として、最後の仕事だ。
「ヒルダ。貴女を解雇します。今まで世話になったわ。今すぐ荷物をまとめて出ていきなさい。もし実家の事で今後セクト殿下に接触する時はグレンを通して頂戴。私は一切関わらないわ」
主人を害する計画に手を貸したケジメはつけなければ。
この事が公になる前に。
ヒルダが頭を垂れる。
「ユキノ様……。私こそ、ありがとうございました」
立ち上がり、退出しようとするヒルダの背中に声をかける。
「もし、今後も私に仕えたいと思ってくれるのなら、全てが片付いた後、一から腕を磨き直してきて」
「っ! はい! それでは、失礼致します」
もう一度頭を下げたヒルダは、清々しい笑顔で部屋を後にした。
「……偉かったね。ユキノなら、今回の事はなかった事にするかと思っていたのに」
グレンになでくりなでくりと髪をかき乱される。
子供のような扱いと彼の言葉に少しムッとしてしまう。
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