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侮らないでほしい。私だって、末席ではあるが王族に名を連ねる人間だ。
王妃になるため日々努力をしてきた。
その努力は元々グレンのためにしたものではない。しかし、今ではもうグレンのためにしたと言っても過言ではいのだ。
「私だって、事の重大さは分かっているつもり」
「もしユキノが彼女を辞めさせなければ、俺が辞めさせていたよ」
「……でしょうね」
ため息をついてグレンを見上げる。
ようするに、試されていたのだ。
グレンは一夫多妻制の権利を放棄したが、彼の元へ自分の娘を嫁がせたい貴族はいまだ後を絶えないと聞く。
そのため、これからも私が狙われる事はあるかもしれない。
「足をすくわれないようにね。毎回俺が助けに行けるわけじゃないから」
「わかってる。今回は……イヤリングのおかげね?」
出立前、イヤリングを肌見離さず持っていて欲しいと言ったのは、彼が転移魔法を使うためだ。
どんな魔法にも制約があり、転移魔法はあらかじめ出入り口を決めておく必要がある。
そのため一度も訪れたことのない場所には行けない。
「正解。寝ている時も付けていてくれるなんて、思ってなかったけどね」
彼の言葉に思考が停止する。
私はイヤリングを手に持って寝落ちたはずだ。
それなのに、イヤリングは耳に付いていた。
何故、なんて考えるまでもなく――
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