35.落とし前

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 侮らないでほしい。私だって、末席ではあるが王族に名を連ねる人間だ。  王妃になるため日々努力をしてきた。  その努力は元々グレンのためにしたものではない。しかし、今ではもうグレンのためにしたと言っても過言ではいのだ。 「私だって、事の重大さは分かっているつもり」 「もしユキノが彼女を辞めさせなければ、俺が辞めさせていたよ」 「……でしょうね」  ため息をついてグレンを見上げる。  ようするに、試されていたのだ。  グレンは一夫多妻制の権利を放棄したが、彼の元へ自分の娘を嫁がせたい貴族はいまだ後を絶えないと聞く。  そのため、これからも私が狙われる事はあるかもしれない。 「足をすくわれないようにね。毎回俺が助けに行けるわけじゃないから」 「わかってる。今回は……イヤリングのおかげね?」  出立前、イヤリングを肌見離さず持っていて欲しいと言ったのは、彼が転移魔法を使うためだ。  どんな魔法にも制約があり、転移魔法はあらかじめ出入り口を決めておく必要がある。  そのため一度も訪れたことのない場所には行けない。 「正解。寝ている時も付けていてくれるなんて、思ってなかったけどね」  彼の言葉に思考が停止する。  私はイヤリングを手に持って寝落ちたはずだ。  それなのに、イヤリングは耳に付いていた。  何故、なんて考えるまでもなく――
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