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飛び上がるように立ち上がり、部屋から飛び出した。
はしたなくも大股で走り出す。
すれ違う人達がぎょっと目を剥くが関係ない。
しばらく駆けて見えた背中に叫ぶ。
「ヒルダ!」
驚いた顔で振り返った彼女に命令を口にする。
「絶対、戻ってくるのよ!」
涙を流しながらもしっかりと頷いたヒルダがまた背を向けて歩き出した。
私は彼女が見えなくなるまでその場で立ち尽くしていた。
たった一度、選択を間違えただけと言われるかもしれない。けれど、されど一度だ。
ゲームのように選択肢を選ぶ前にセーブなど出来るはずもない。
これは彼女が選択した結果だ。
私はそれを受け入れるしかない。
私に出来ることはこれだけ。
ヒルダがもう一度私の元へ戻ってくると祈るしかない。
落ち込む気持ちを隠し、私は自室へと戻った。
「気はすんだ?」
「いきなりごめんなさい。でも、気はすんだ」
「ならよかった」
グレンは隣の座った私を引き寄せ、今度は優しく頭を撫でる。
落ち込んでいるのがバレているのだろう。
私は彼に身を預け、甘んじて慰めを受け入れた。
本当は慰めなんていらないと跳ね除けてしまいたい。薄情者だと罵られた方がいい。でもそれは私の自己満足だ。
グレンの満足のいくまで撫でられ、心地よさにうつらうつらしてきた頃。
彼の声で起こされた。
「じゃあ次はセクトの番だね」
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