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「話を戻すけれど、あなた達のせいで竜神が辺境に姿を現したって驚きよ。国中パニックよ。パニック! おわかり?」
ごもっともな指摘に項垂れる。
「わ、分かってるよぉ。ナーシャちゃん」
「そのおかげで辺境伯が自首したのは良いことだとしても、国の被害を考えなさいな」
「はぁい」
「いくら竜信仰の国だとはいえ、やりすぎよ!」
「仰る通りです……」
どうして私が怒られなければならないのか。
そんな感情が顔に溢れ出ていたのか、ナーシャが手に持っていた扇をビシッと私に向けた。
「グレン殿下の番でしょう!? ちゃんと制御するのが、あなたの務めでしょうが」
「えぇ……」
そんな無茶な。
あの切れ者のグレンを制御する? 出来る気がしない。
「頑張りなさい」
「……善処します」
「よろしい。そうそう、辺境伯余罪がボロボロ出てきているようね。悪事に手を染めるなら骨までも。みたいな考えは悪役の性なのかしらね? 仮にも辺境伯なのだから、火遊び程度なら目も瞑られたでしょうに」
「うーん。なんでだろうね? まぁ、辺境伯は息子に位を譲ったし、監視も付いたんだからもう何も出来ないはず」
そう言い切って茶菓子をつまみ、口に放り込んだ。
にやにやとした淑女らしくない顔で、ナーシャは笑う。
「それでぇ? グレン殿下のこと、本当に好きになっちゃったのね?」
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