プロローグ

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 人気のない廊下を進む。  たった今婚約破棄をされた女とは思えないほど、私の頬は緩みきっているだろう。 「ふふふふ……。やっと終わったわ」  彼は知らない。この世界の誰も知らない。私だけの秘密。  それは──  この世界が、R18指定の女性向けエロゲーだという事。  そしてこのゲームの主人公は私、ユキノ・フォン・グレード。  腰まである絹のようなウェーブがかった白髪。紫紺の瞳はまるでアメジストを埋め込んだみたいで。  豊満な胸。くびれたウエスト。小さな身長。  男性の理想を体現した姿は誰をも魅了した。  そして、魔法ありありなこの世界で私は最強だった。  回復魔法以外は何でもこなしてしまう天才で、攻略対象はそんなユキノに劣等感を抱き、快楽という逃れられない楔を刻み、蹂躙して、自尊心を守るのだ。  婚約者であった王子も攻略対象で、主人公を三日三晩抱き潰しても足りないという、絶倫王子だ。  その他の攻略者もドSから始まりハードなアブノーマルは勿論のこと、触手プレイや人外まで取り揃えているという、少し、いやかなり、マニアックな陵辱モノのエロゲーだった。  エロゲ好きの友人に頼み込まれ、仕方なくプレイしたがあまり面白くもなかった為、内容はあまり覚えていない。  それが功を奏したのか、絶倫王子を悪役令嬢に譲る事ができた。  これでゲームのストーリーから解放され、晴れて私は自由の身になったわけだ。
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