02.はじめまして、さようなら。

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 もちろん身体能力向上の魔法を自身にかけることも忘れない。 「〜っ!?!?!?!?!??!」  声にならない声を上げ、のたうち回るレオンを放置し、私は体育倉庫を出た。  数歩進んだところで、後ろから声をかけられる。 「クククッえげつない事するね、君」  振り向けば、そこには高身長のイケメンが笑顔で立っていた。  この世界はイケメンしか存在しないわけ? でもこんなイケメン攻略対象に居なかった気がするけど……。  カラスの濡羽のような艷やかな黒髪。  オニキスのような黒色の瞳。  整い過ぎた顔立ちは暴力的なまでに美しく、呼吸すらも忘れてしまいそうだ。  制服の上からでもその体躯が鍛えられている事がわかる。  日本人なその見た目は、東の大国シエロニアの特徴だ。  シエロニアからの留学生よね……?  デビュタント以外の社交界を全て欠席している私には、彼が誰なのか分からない。  いい男だわ。  顔も、体つきも、声も、全てが私好みでお近づきになりたいという欲が湧く。  しかし、私は王子の婚約者だ。  異性と仲良くしすぎると、不貞という烙印を押され断罪(処刑)されてしまう。
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