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*** 「まあ、河合、矢口好きになって変わったけんな。分からんやつには分からんやろ」  ひと通り話を聞いた中川はそう言った。  私は泣いて少しすっきりしていた。 「中川は分かったやんか」 「俺は分かる。河合がどんなふうに変わっても気付く」  自信満々に中川は言った。  心臓がまたとくんと鳴る。 「なんで?」 「お前、ニブ過ぎ。好きじゃなかったら、わざわざ福岡の大学受けるか」 「なんでよ。なんで私が好きなん? 私、中川に好かれることなんかなんもしてなか。さっきだって、助けてくれたの矢口やったらって……」  中川は私にデコピンをした。 「そんなん、分かっとるわ! そんだけ矢口を好きっちゃろーもん。好きに理由なんかあるん? 河合は矢口のどこを好きになったん? 答えられんやろ?」 「……うん」 「で? どーするん?」 「え?」 「まさかこのまま諦めるんか?」  私は中川の言っている意味がわからなかった。  なんで私のこと好きなのにそんなこと言うと? 「だって、認識すらされてないとよ?」 「それがどーしたよ。河合、ほんと」 「はいはい。らしくねえって言うっちゃろ? 私らしさなんて自分でも分からん。ただ、大学生活は楽しみたか」 「リベンジはせんでいいと?」 「そりゃ、悔しかとは思う。けど、中川の言う通り、少し窮屈やったかもしれん。こんなワンピなんか似合わんのに」  言ったらまた涙が出そうになって、私は頬をぐいと拭った。 「化粧落ちるぞ」 「別によか」 「ワンピ、似合うとる。脱ぐなら俺の部屋にせろよ」 「はあ〜?」  私はグーパンチを中川に放ったけれど、中川の大きな手に受け止められた。  なんだか泣きたいのか笑いたいのか。私は中川をしばらくばしばしと叩いた。中川は笑いながらそれを手で防いだ。 「送っちゃるよ」 「ありがと」  変な感じだった。
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