そうして君は、恋を歌う。

となりまちの歌

　翌朝、会場に着くと彼らはいた。ガラガラの場内で、和気あいあいと何かを話している。物販コーナーを見ていると、
「あれ？お客さん？」
と、リーダーでベース担当のハルマが声を掛けてくれた。
「はい。あの、このタオル……欲しいでしゅ」
噛んでしまった……。
「あー、これね！デザイン性いいよね！」
「そそそう……ですね。」
緊張で上手く話せない。
「はい、お釣り！」
「あり、がと、ござ、います……」
ガチガチに固まっている私を見かねてか、ハルマは優しく微笑んで、
「今日は来てくれてありがとう。楽しんでね」
と言ってくれた。
私はさっきより大きな声で、
「はい!」
と言えた。
　ハルマはよく気が付く優しい性格だとファン内では有名だ。実を言うと、私はギター＆ボーカル担当で明るいコウキ推しだけれど。他には、ドラム担当で天然なヒロ、キーボード担当で冷静なシュウがいる。SNSのライブ配信でこの四人の絡みを見るのも、楽しみの一つだ。
　そうこうしているうちに、開演五分前となった。ワクワクとドキドキで胸がいっぱいだ。