嫉妬の海を泳ぎきったら、夜が空けていた。

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Twitterを見るのは楽しいけどつらい。 もともとファンであるとか、憧れの存在だったなら良いのだけれど、相手が対等だった場合。 あるいは、そんなつもりはなかったはずなんだけど、心の中で格下だと思っていた場合。 その夜エルは、眠れなくなっていた。 タイムラインは容赦ない。 いいねの数、フォロワーの数。 圧倒的に上手いと思う作品の作者が年下だったり。 まあそんなのは日常茶飯事なので、もはやダメージを受けることもない。ちょっと心がモヤッとするくらいだ。 「今日から配信!!楽曲提供いたしました!!」 見覚えのあるアイコンに、スマホをスクロールしていたエルの手が止まる。 それは、昔馴染みのフォロワーからきた、結構メジャーなアーティストに楽曲が採用されたという告知だった。 黒いモヤモヤを胸に感じながら、リンク先のYouTubeを開く。アップロードされていたその曲は、なんとも不思議でファンタジックな作品だった。好意的なコメントが幾つも綴られている。 Twitterをフォローしてきたのは向こうからだった。作品にもよく賞賛のコメントをくれた。 いつから疎遠になってしまったんだろう。 そういえば、エルさんの影響で作曲を始めたと言ってたっけ。 つまらない事を思い出したな、とエルはスマホをソファに投げる。 エルの曲を褒めてくれる人はいる。楽しみにしているというコメントももらうし、中には聞いて泣いたなんていうのもある。それホントは泣いてないから、などと冗談も言うけれど、嬉しい事には変わりない。 でも、一段上に行けない。 コンテストで音源審査は通っても入賞はできない。 コンペの最終で落ちる。 音楽で食べていくなんて考えてはいないけれど、こうプロから認められない事が続いている所に、追い打ちをかけるようにこんな知らせを見てしまう。 自分は何のために歌を作っているんだろうな。 そんな、眠れない夜にありがちな思考を頭の中に巡らせながら、エルはディレクターから突っ返された自分の曲を再生してみた。 「いい曲じゃん」 ディレクターの耳が腐ってる、なんて下卑た事は言いたくなかった。そんなことをしたら、本当に自分が嫌いになりそうだった。 「選ばれなかったけど、いい曲。そういう事にしとこう」 うらやましいよー! Twitterのコメント欄にそう打ち込んで、エルは少しスッキリした気がした。 もう、夜が開ける。眠れない夜も、もうおしまいだ。
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