紅葉の悟り

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「よっこらしょ」  玄関で腰を下ろして、靴紐を結ぶ。馬鹿正直に履き続けてきた革靴も、もうやめた。今は履きやすいスポーツシューズだ。  靴紐を結んでいると、息子が革靴を履いて玄関の扉に手をかけた。いつも私より遅く出るのに、珍しい。 「おぉ、早いな」  そう声をかけると、少しだけこちらに顔を向けて、息子が頷いた。 「今日は、大事な会議があるんだ。発言したいことを、昨日から考えてた」  そう言ってから、玄関の扉を開けた。 「行ってきます」  朝日を浴びた息子の背中は、人一倍眩しく、そして自分の背中よりも大きく見えた。  だがな、息子よ。まだまだ負けないぞ。 「はい、行ってらっしゃいませ」  妻から鞄を受け取り、眩しい息子の背中を追う。
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