若葉の起り

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 おにぎり、カップサラダ、ミックスサンドイッチ、お茶と缶コーヒーをカゴに入れてレジに向かう。おにぎりとサラダ、お茶は昼食用だ。  いつもは部屋で朝食を摂り、スマートフォンを見ながらコーヒーを飲んでいる時間だ。朝のまったりタイム。自分で勝手にそう呼んでいる。この時間がちょっとしたゴールデンタイム。仕事なんだけど、まだ仕事じゃない。個人的に好きな時間のひとつだった。  レジが混雑している。どう見ても散歩の途中のおじいさんとかは、列を譲ってほしいと思う。他にやることなんてないのなら尚更だ。 「こちらのレジどうぞ」  レジが1台開いた。見た目キツめで、気の強そうなお姉さん。なかなか美人なので、よくおじさん連中に声を掛けられているのを見たことがある。正直、僕は少し苦手だった。なんだか目がね、全部見透かしていそうな気がするんだ。  合計で886円。なんだか高い気がするけれど、まあこんなものだろう。会計をバーコード決済で済ませて、レジ袋を受け取る。 「行ってらっしゃいませ」  何気ない一言に、ちょっとどきりとする。満面の笑みというわけではないけれど、ちょっとした微笑みが刺さる。行ってらっしゃいなんて言われたのは、高校の時以来かもしれない。
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