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放課後、いつもの帰り道。俺は明と一緒に帰っていた。
「ねえ、遼。今度、この前見たいって言ってた映画見にいかない?」
「…!行く!」
「ふはっ、じゃあ今週の土曜日行こ」
「それって明日じゃん」
こうして軽口を叩きながら並んで歩いていると、突然後ろから声をかけられた。
「あのぉー」
「?」
見ると同じ制服を着た見たことのない女子。
彼女はチラッと俺の方を一瞥すると若干嫌そうな顔をした。
「……あ、俺、先行ってるな!」
「えっ、あ…」
俺は明一人置いて早足でその場を去った。
……が、明はすぐに俺に追いついてしまった。
「遼!置いていくなよー」
「今のナンパじゃん、いいの?」
「いいよ、俺には遼が居れば十分って言ったじゃん」
「……」
その日の俺はきっと疲れていた。
幼馴染といえども思わず顔色を伺ってしまう関係、周りと馴染めないこと、そして一人であること────
だから間違えてしまった。間違えた言葉を紡いでしまった。
「……明、もう俺とつるむのはやめた方がいい。やっぱり俺とお前じゃ釣り合わないよ…それに───」
──しまった。
そう思ったときにはもう手遅れだった。
にこにこと笑顔を浮かべていた明の顔はたちまち豹変し、真っ黒な瞳で俺を見つめていた。
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