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「……遼、それだけは言うなって言ったよね?」
「…ぁ、ち、ちがっ…あき」
──明、と呼ぶ前に俺は顔を両手で掴まれ無理やり上に向けさせられた。
明の表情はいつも怖いと思っていた顔の比ではない。とても饒舌しがたいものであった。
「ご、ごめん……なさ」
「遼、俺は遼のこと大好きだからさ。大好きな遼からそんなこと言われるなんて悲しいよ。
ね?もう言わないって約束して?」
「…ぁ。ぅ、い、言わない…ごめっ」
謝ることしかできない。
明は静かに怒る。そしてそれはとてつもなく深く暗く───そして、怖い。
「よかった」
にこりと元の優しい表情に戻った明だが、目の奥は未だ暗い。
俺は、ただ謝罪の行動として彼の唇に触れた。
刹那、明の目はいつも通り優しい暖かみを帯びた視線に変わり、嬉しそうに笑った。
対する俺も笑う。
───その目に光は宿っていなかった。
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