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69 翌朝。 「カーテン買いに行くかぁ…」 柿田は燦々と降り注ぐ朝日を顔面に受けて目覚めた。昨日の夕方とは打って変わっての晴天である。 人間らしく幸福を感じながら生きる生活が始まると、今まで無頓着だった部分が気になり始める。 カーテン然り、台所用品も買い足すべきだ。 柿田は上半身裸、スウェットの緩いズボンだけという格好でコーヒーを淹れる。 彫刻のような腹筋が、顔面同様に美しい。 冷房のきいた涼しい部屋でドリップしたホットコーヒーをマグに注ぎ、それを手に伸びをした。 「んぅ〜〜っ……ん?…」 カーテンのかかっていないベランダの掃き出し窓の向こうに何となく視線を感じる。 柿田はペタペタと裸足の足音を立てながらトンと上部の窓額縁に左手をかけた。 外を覗くように辺りを見渡したけれど、誰も居ない。 昨日から疲れているのだろうかと目頭を押さえる。 普段から好奇の目に晒される事は珍しくない柿田。タッパも有れば、顔面のインパクトも並ではない上、ちょっとした業界の有名人でもある。おまけに本人はゲイを公言してるわけだから、妙な視線がない筈もないわけだ。 しかし、最近は雛士にかかりきりだし、嫌がらせを受けるような、火遊びはした覚えがない。過去の遊び相手が、今更嫌がらせをするなんて事も、時間的に時が経ち過ぎている。 昨日から感じる気配は、そんな嫌がらせというより、少し粘着質な物を感じた。 柿田はベッドのサイドテーブルにマグを置き、ベッドに倒れ込んだ。 「気のせいにしちゃ、ネチっと感じるんだよなぁ」 呟いてから、考えるのがバカバカしくなり顔を洗って髪を結び外へ出た。
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