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5 柿田に抱きしめられたままだった雛士は遠慮がちに呟く。 「あ、あの…タ、タイムカードを」 「あぁっ、そうだったね。こっちだよ。」 柿田はズラリと並んだ灰色の良くあるロッカーの前を通り、部屋の奥にあるタイムレコーダーを案内した。 白く小さな手に握ったカードを横目に柿田は目を伏せる。 参ったな…良く似てんじゃん 心の中で呟いたら、パンと手を合わせた。 「さっ!着替えてフロアに出ようか!」 柿田は雑念でも振り払うように笑顔で髪をかき上げた。 雛士はそんな柿田をポ〜ッと赤らめた顔で見上げてくる。 「ん?どうかした?」 柿田は雛士を見下ろす。 「かっ!柿田さんて写真より本物の方がずっとカッコイイですね!俺、バリスタの記事で見た事あって!」 「…あぁ…そっか、うんうん、俺ってカッコイイよねぇ〜っ!アハハ!ヒナはとっても可愛いよ〜!」 頰に手を伸ばすと、雛士はビクンと肩を窄めて驚いた。いちいち反応が女子よりも可愛い。柿田は「困ったな…」といつものおふざけを出し切る事ができなかった。 店の前でいつものように関の戻りを待っていた宝井は車から出て、車体に体を任せタバコをふかしていた。 書類を両手に抱えるように持った関を見て、ふっと笑顔が溢れる。 「大丈夫か?手伝う」 「大丈夫です。今離したらバラバラになりそうなんで、後ろ、開けて貰えますか?」 宝井は急いで咥えタバコをして、後部座席のドアを開けた。 ドサっと書類をシートに置き、フゥッと息を吐く関。 「重いなら呼べよ。」 「これくらい俺でも持てます。」 「俺はおまえを甘やかしたいんだが?」 小首を傾け視線を合わせてくる宝井に関は頰を染める。 「十分甘やかされてます」 「夜の話じゃねぇぞ」 「わっ!分かってますよっ!それよりっ!」 「ん?なんだぁ?」 運転席に腰をおろしながら宝井は隣に座った関に目をやる。 「忍さん、面白い玩具を手に入れたみたいですよ。すっごく小柄なぁ〜…小動物みたいな子で」 関の言葉に宝井は少しだけ遠い目をして、紫煙を燻らせた。
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