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「く····君主、ソレだけはっ!それだけは···っ!」  箱を開けて中に入った紅く輝く紅玉を床に落とす。  それを錦の擬態が手を伸ばし取り戻そうとするが  床から現れた影により擬態共々錦は取り込まれた。 「···········」  錦が消えた事によりシンっと静まり返る。 「····で?戦況は?」  闇神が一言呟くように聞くと家臣達が北と悪神達との戦争状況を報告する。  報告を受けた後に軽い返事を返した後、闇神は会議室から出ていった。 「···まさか錦殿が」 「あの御方、何を考えていたのか分からなかったからなぁ」 「それを言うなら今の君主も···」 「シッ!口を慎め···殺されるぞ」  闇神がいなくなった会議室では家臣達がヒソヒソと話し合う。  悪神との戦況は北が優勢だが、南との戦も控えている。これからの北はどうなるのか。  それに跡継ぎ問題も出てきた。  青嵐によって白雪以外の闇神の子は殺された。  その青嵐も反逆罪として北を追放。  闇神の妃はいるが、闇神本人がもう跡継ぎを作る気はない。  現在闇神と関わっている異性は閉じ込めた娘だけだ。 「いっそ愛姫を娶るのはどうか?」 「水神と姦通し、蕃神の元で反逆を企てた重罪人だぞ」 「しかし、愛姫との子を宿せば····」  愛姫との子供は親の神力を超越する程強いと言われている。  実際に海外に生まれた歴代の愛姫との子供は強い神力をもって生まれ、国の頂点に君臨した歴史がある。 神人の寿命は長い。 親子が近親相姦の末に夫婦になるなんて事は珍しい事ではない世界だ。 それは倭の国土も例外ではない。 「それにもう愛姫が何処かの国に嫁ぐ事なんて出来ないだろう」 父親によってにされてしまった身体の娘を誰が娶るだろうか。 悪神の元しか嫁げない。 悪神の事を一番よく知っている父親がそれを許すはずがない。           * 窓ひとつない奥座敷に幽閉した眠る白い娘の寝台に腰掛け、短くなった髪の毛を触る。 痛々しい姿にしたのは己自身。 逃げるどころか一人で歩く事は叶わず 念話以外で会話をする事も出来ず もう片方の瞳が光を見る事は出来ない。 「·····こんな娘の姿をあやつが見たらなんと思うか····」 全力で己を殺しにくると信じたいところだ。 「お前の息子の魂は戻した」 だが、もう。 その意味を知る者は闇神以外知らない。
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