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「君主、南の蕃神が動き出したとの報告がありました」  そろそろだろうとは思っていた。  領土になんて興味は無い。  ただ、再び娘を奪いに来る連中の一人だと言う事だけだ。  それを返り討ちにするだけの事。  幽閉した部屋に行けば鎖に繋がれた白い娘が椅子に座っている。 「お前一人に随分と大事になってしまった」 「····················」  ---ジャラリと鎖の音がまるで返事をしているかのように部屋に響いた。  眼黒病が進行し瞳の色は何も映し出すことの無い漆黒の色となり、もう何も見ることが出来ない。  そんな盲目の娘の頬を父は撫でる。 「お前が外に出れば必要の無い者が寄ってくる」  悪神達だけでない。  蕃神も火ノ神も水神も。  外に出るから娘欲しさに大きな争いが起きた。 「····お前は」  全てが終わるまでここから出るな。  そう言って父は部屋から出ていった。  「··············」  ----カチャ····カチャ······と、一人になった部屋で静かに金属の音がする。  目が見えなくても大丈夫。  口が聞けなくても問題ない。  歩けなくなろうと       辱められようと  こんなところで折れてたまるか。            
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