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「あ、なるほど。ではわたくしは七日間だけガマンすればよいのですね」
「YESじゃ」
………………ん?
聞き捨てならない会話が聞こえたぞ!
「ちょ、ちょっと待って。わたし、あと一週間で死ぬの!?」
「それもYESじゃ」
「ニコニコして言うコトじゃなくない!?」
「まあ焦るでない。瑚兎子には、なに者かによってきわめて邪悪な呪いがかけられておる。犯人さえわかればめーかの解呪によって助けられるのじゃが……そうじゃ!」
ピコンっと冥花の頭上に電球マークが表示される。
その思いついたカオ、わざとらしー。
なんとなくイヤな予感。
「このところ夕霧町では呪いを原因とするトラブルが多くての。町を箱で推す身としては心苦しいかぎり。瑚兎子が解決を手伝ってくれるのなら、犯人探しに手を貸してやらんこともないぞ~……チラッ」
「ええ~……わ、わかった。やるよ」
ふたつ返事をしつつ、頭の中では後悔の嵐が吹き荒れる。
……陽芽の言った通り、面倒事に巻きこまれちゃった気がする!
「交渉成立。ではトクベツにこの御守りをさずけよう」
小さなガラスの風鈴が、夕焼けを反射して赤い金魚のように光った。
フシギなことに、揺らしても音は鳴らない。
「呪いに反応して鳴る〈しらせの風鈴〉じゃ。犯人探しに役立つじゃろう。ちなみに、瑚兎子の風鈴が鳴れば、めーかが持っているこっちの風鈴も鳴る仕組みになっておる」
「へ、へえ。呪いの便利グッズだ」
恐怖をごまかすため、強がって茶化してみる。
「ここで見聞きしたことはだれにも内緒じゃ。約束できるな?」
「できる、できる、超できる」
「コイツ絶対しゃべりますよ、冥花!」
「素晴らしい、いい返事じゃ。では、また会おうぞ」
つられてわたしも「またね」と返事をしようとしたが、手を振った相手は冥花ではなく、ただのイチョウの木だった。
――えっ? 冥花は? たぬは、どこに行ったの!?
逢魔が宮があった場所には、うっそうと木々がおいしげるばかりで、あたりには鳥居もなにもない。
血の契約とか呪いがどうとか、全部まぼろしだったのかな?
とぼとぼと階段をおりながら(きつねにつままれた気持ちって、こういう感じなのかー)と心の中でつぶやいて、思い直した。
いや。
化かしたのはきつねじゃなくて、たぬきだ。ゼッタイ。
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