6月2日(月) 巫女とたぬきとわたしの呪い

4/4

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「あ、なるほど。ではわたくしは七日間だけガマンすればよいのですね」 「YESじゃ」  ………………ん?  聞き捨てならない会話が聞こえたぞ! 「ちょ、ちょっと待って。わたし、あと一週間で死ぬの!?」 「それもYESじゃ」 「ニコニコして言うコトじゃなくない!?」 「まあ焦るでない。瑚兎子には、なに者かによってきわめて邪悪な呪いがかけられておる。犯人さえわかればめーかの解呪によって助けられるのじゃが……そうじゃ!」  ピコンっと冥花の頭上に電球マークが表示される。  その思いついたカオ、わざとらしー。  なんとなくイヤな予感。 「このところ夕霧町では呪いを原因とするトラブルが多くての。町を箱で推す身としては心苦しいかぎり。瑚兎子が解決を手伝ってくれるのなら、犯人探しに手を貸してやらんこともないぞ~……チラッ」 「ええ~……わ、わかった。やるよ」  ふたつ返事をしつつ、頭の中では後悔の嵐が吹き荒れる。  ……陽芽の言った通り、面倒事に巻きこまれちゃった気がする! 「交渉成立。ではトクベツにこの御守りをさずけよう」  小さなガラスの風鈴が、夕焼けを反射して赤い金魚のように光った。  フシギなことに、揺らしても音は鳴らない。 「呪いに反応して鳴る〈しらせの風鈴〉じゃ。犯人探しに役立つじゃろう。ちなみに、瑚兎子の風鈴が鳴れば、めーかが持っているこっちの風鈴も鳴る仕組みになっておる」 「へ、へえ。呪いの便利グッズだ」  恐怖をごまかすため、強がって茶化してみる。 「ここで見聞きしたことはだれにも内緒じゃ。約束できるな?」 「できる、できる、超できる」 「コイツ絶対しゃべりますよ、冥花!」 「素晴らしい、いい返事じゃ。では、また会おうぞ」  つられてわたしも「またね」と返事をしようとしたが、手を振った相手は冥花ではなく、ただのイチョウの木だった。  ――えっ? 冥花は? たぬは、どこに行ったの!?  逢魔が宮があった場所には、うっそうと木々がおいしげるばかりで、あたりには鳥居もなにもない。  血の契約とか呪いがどうとか、全部まぼろしだったのかな?  とぼとぼと階段をおりながら(って、こういう感じなのかー)と心の中でつぶやいて、思い直した。  いや。  化かしたのはきつねじゃなくて、たぬきだ。ゼッタイ。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加